◆基礎断熱はシロアリに喰われるというが?◆

「建築技術」 一月号で掲載された当社代表、南山の記事です。 

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※右の写真はクリックで拡大します。(pdfファイル)

【以下、内容】

シロアリは生き物
まず最初に理解していただきたいことは,当たり前のことであるがシロアリは生き物,ということである。生き物というものは,その行動を100%予測することは不可能である。本稿では,シロアリの生態から見た防蟻対策の基本について述べるが,例外がたくさんあるということを踏まえて読み取っていただければ幸いである。

防蟻対策の基本はバリア形成
 シロアリは,餌を求めて地中を移動している。目は退化しており,その行動はランダムで,とりあえずぶつかったものは何でもかじってみる,という習性がある。また,光と風(空気の動き)を嫌うので,人の目に触れるところを歩くことはまずない。図1は,ごく一般的な住宅におけるシロアリの侵入経路である。防蟻対策の基本は,この侵入経路に何らかのバリアを形成することである。通常は,薬剤を使用しており,これをケミカルバリアという。薬剤に代わるものとして,ステンレスメッシュなどを使用する場合は,フィジカルバリアという。バリア形成において注意しなければならない点は,侵入の可能性のある部分を網羅することである。特に,フィジカルバリアの場合は,異質な材料との接合部からの侵入に配慮が必要である。品確法で,地盤の防蟻措置として認められているべた基礎であっても,コンクリート打継ぎ部やセパレータの穴,配管貫通部などから侵入の可能性がある。さらに大切な点は,バリアの経年による劣化である。劣化の可能性がある場合は,その時点での再度の対策が可能かどうかも問題になる。


シロアリと基礎断熱
 さて,最近問題になっている基礎断熱であるが,まず断熱材そのものがシロアリの侵入経路になってしまう。特に,発泡系の断熱材はやわらかくてかじりやすく,天敵も少ないうえに快適である。ひとたび侵入が始まると,あっという問に外壁内に到達してしまう。        
 この侵入を,新築時の対策で止めようとしても,一筋縄ではいかない。防蟻剤を混入した断熱材もあるが,基礎との接着面の隙間から侵入してしまう。ではどうしたらよいのであろうか。シロアリ業者の立場からいわせてもらえば,基礎断熱はやめていただきたい,という結論になってしまう。床断熱であれば,従来どおりの対策でよいわけである。ただし,現実問題として,建物は防蟻だけを考えて建てるわけではない。それぞれに優先順位というものがある。


防蟻対策は長期的なシステムが重要
 ここで大切なことは,防蟻対策というものを長期的なシステムとして捉えることである。新築時に何かやっておけば終わり,というものではないのである。どんな対策を施そうが,何十年もの間シロアリを完全に防ぎ続けることは絶対にできない。

 

基礎断熱はシロアリに喰われるというが?
 当然,新築時の対策の内容や,建物の構造,納まり,立地条件,施主の要望(予算)などによって,メンテナンス内容は異なってくる。重要な点は,専門家による点検が不可欠なことである。極端な話,専門家による点検を毎月受けていれば,予防対策は何もしていなくても,建物をシロァリから守ることができる(膨大な費用がかかってしまうが)。


設計時に点検できるように配慮する
 ただし,そもそも点検ができなければどうしようもない。シロアリの点検は,床下を見なければできない。設計に際しては,床高や基礎の人通口,床下点検口などに,特に配慮していただきたい。床下空間がなかったり,あっても人が入れないような建物では,現状がどうなっているのかまったくわからない。万が一,シロアリが侵入した場合でも,初期段階で発見することはできないので,被害が拡大してしまう。羽アリ発生などの兆候が現れ,被害が顕在化したときには,すでに相当食害が進んでしまっていた,ということになりかねない。


メンテナンス時の注意点
 防蟻のためのメンテナンスを行う際にも,気を付けなくてはならない点がある。基礎断熱の建物は,床下空間を室内とみなしている。場合によっては,床下の空気を室内に取り込んで循環させるようなシステムもある。このような場合は,薬剤を床下に使用しづらい。このようなときには,「ベイト工法」という方法もある。これは,建物の外周に「ステーション」というシロアリ探知機のような器具を3〜5mピッチで埋め込み,定期的に点検し管理する工法である。誌面の関係で詳しくは紹介できないので,興味のある方はインターネットで調べていただきたい。


おわりに
 冒頭にも述べたが,シロアリ対策に100%はない。布基礎の外側に堂々と蟻道をつくって侵入してくることもあるし,羽アリが飛んできて直接外壁に侵入することもある。ルーフバルコニーの雨仕舞の不具合から侵入することもある。結局,建物をシロアリから長期にわたって守り続けるには,定期点検をはじめとしたメンテナンスシステムが必要なのである。